SU剤
・グリメピリド(アマリール)
本剤は、主に肝代謝酵素CYP2C9の関与により、シクロヘキシル環メチル基の水酸化を受ける
健康成人男子6例に本剤1mgを朝食直前に単回経口投与したとき、血清中にはグリメピリド及び代謝物が、尿中には代謝物のみが検出された。この代謝物は、シクロヘキシル環のメチル基の水酸化体及びカルボン酸体で、投与後24時間までに投与量の44.9%が尿中に排泄された。
外国人3例に14C-グリメピリドを単回経口投与した時、投与後168時間までに尿及び糞中にそれぞれ投与量の57.5%及び35.0%が排泄された
※ウサギ、ラット、イヌを用いた経口投与試験において、本剤の血糖降下作用は投与1時間後から認められた
・グリクラジド(グリミクロン)
グリクラジドは、トリル基のメチルが酸化を受け、ヒドロキシメチル体、カルボキシル体が生成する経路と、アザビシクロオクチル環の異なった位置に水酸基が導入される経路がある。また、アザビシクロオクチル環の水酸化体の一部分はグルクロン酸抱合される
投与後24時間までに投与量の45%、同じく96時間までに61%が尿中排泄された。排泄物は、いずれも代謝物で未変化体は検出されなかった
※最大作用の発現時間は投与後約3時間で、6時間以降では作用はほぼ消失する
グリニド
・レパグリニド(シュアポスト)
本剤は、主として薬物代謝酵素CYP2C8及び一部CYP3A4で代謝される。
健康成人男性(日本人及び外国人)に14C標識レパグリニド2mg溶液を単回経口投与したとき、投与した放射能の約9%は尿中に、約95%は糞中に排泄されたが、尿中及び糞中から未変化体はほとんど検出されなかった。糞中代謝物の組成はジカルボン酸体(63.4%)、ピペリジン環水酸化体(CYP2C8及びCYP3A4によって生成、14.4%)等であった
・ミチグリニド(グルファスト)
ミチグリニドカルシウム水和物は、ヒトにおいて肝臓及び腎臓で代謝され、グルクロン酸抱合体は主に薬物代謝酵素のUGT1A9及び1A3により、ヒドロキシ体は主にCYP2C9により生成されることがin vitro試験により確認されている
健康成人男性に[14C]標識ミチグリニドカルシウム水和物11mg溶液を食直前に単回経口投与したとき、放射能の約93%は尿中に、約6%は糞中に排泄された
・ナテグリニド(ファスティック)
健康成人男性にナテグリニド60mgを経口投与したとき、血漿中のナテグリニドの代謝物としてイソプロピル基の水酸化体が最も多く、次いでイソプロピル基の脱水素体が認められ、他の代謝物は検出されなかった。
ナテグリニドは、ラット及びイヌにおいて肝臓及び腎臓で代謝され、ヒトにおいては主として肝臓の薬物代謝酵素CYP2C9で代謝された(in vitro試験)。
尿中にはイソプロピル基の水酸化体が主として排泄され(投与量の約40%)、未変化体の尿中排泄率は約5%であった。一方、ラット及びイヌに放射能標識したナテグリニドを投与したとき、投与した放射能の30~40%が尿中に、50~60%が胆汁中に排泄された
ⅮPP-4阻害薬
・サキサグリプチン(オングリザ)
本剤はCYP3A4/5により代謝され、主要活性代謝物を生成する
・ビルダグリプチン(エクア)
ビルダグリプチンはCYP2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2E1、2J2、3A4では代謝されなかった。また、CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1、3A4/5を阻害せず、CYP1A2、2C8、2B6、2C9、2C19、3Aを誘導しなかった。
・シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)
シタグリプチンは、代謝を受けにくく、主に未変化体として尿中に排泄される。健康成人(外国人)に14C-シタグリプチンの経口投与後、放射能の約16%がシタグリプチンの代謝物として排泄された。6種類の代謝物が検出されたが、微量であり、シタグリプチンの血漿中ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害活性に影響しないと考えられる
シタグリプチンの消失において代謝の関与は少ない。In vitro試験では、シタグリプチンの代謝にCYP3A4が主に関与し、また、CYP2C8も関与することが示された。また、シタグリプチンはCYP3A4、2C8、2C9、2D6、1A2、2C19及び2B6を阻害せず、CYP3A4を誘導しなかった
健康成人にシタグリプチン25~100mgを単回経口投与した場合、シタグリプチンの79~88%(推測値)は尿中に未変化体として排泄され、腎クリアランスは397~464mL/minであった
健康成人(外国人)に14C-シタグリプチンを経口投与後、1週間以内に投与放射能の約13%が糞中に、87%が尿中に排泄された。シタグリプチンの消失は主に腎排泄によるもので、能動的な尿細管分泌が関与する。
シタグリプチンはP-糖タンパク質及び有機アニオントランスポーター(hOAT3)の基質である。In vitro試験で、P-糖タンパク質を介するシタグリプチンの輸送はシクロスポリンにより阻害され、hOAT3を介するシタグリプチンの取込みは、プロベネシド、イブプロフェン、フロセミド、フェノフィブリック酸、キナプリル、インダパミド及びシメチジンで阻害された。また、シタグリプチンは500μMまでの濃度では、P-糖タンパク質を介するジゴキシンの輸送を阻害しなかったが、hOAT3を介するシメチジンの取込みには弱い阻害作用を示した(IC50:160μM)
・テネリグリプチン(テネリア)
- テネリグリプチンの代謝には主にCYP3A4、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO1及びFMO3)が関与する。また、テネリグリプチンはCYP2D6、CYP3A4及びFMOに対して弱い阻害作用を示したが(IC50値:489.4、197.5及び467.2μmol/L)、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C8/9、CYP2C19、CYP2E1に対して阻害作用を示さず、CYP1A2及びCYP3A4を誘導しなかった
- 健康成人(外国人、6例)に、[14C]標識テネリグリプチン20mgを単回経口投与したとき、投与後216時間までに投与放射能の45.4%が尿中に、46.5%が糞中に排泄された。また、投与後120時間までの投与量に対する未変化体、M1、M2及びM3の累積尿中排泄率は、それぞれ14.8%、17.7%、1.4%、1.9%であり、未変化体、M1、M3、M4及びM5の累積糞中排泄率は、それぞれ26.1%、4.0%、1.6%、0.3%及び1.3%であった
- 健康成人に、テネリグリプチンとして20及び40mgを空腹時に単回経口投与したとき(各6例)、投与量の21.0~22.1%が尿中に未変化体として排泄され、腎クリアランスは37~39mL/hr/kgであった
・アナグリプチン(スイニー)
健康成人男性(6例)に[14C]アナグリプチン100mgを単回経口投与したとき、血漿中及び尿中にはアナグリプチン及びシアノ基が加水分解された不活性代謝物(SKL-12320)が存在した。糞中にはアナグリプチン及びSKL-12320の他に5種の微量代謝物(投与量の1%未満)が検出された。尿糞の総計における存在比は、アナグリプチンが投与量の50.7%、SKL-12320が29.2%であった(外国人データ)。
アナグリプチンはヒト肝S9による代謝をほとんど受けなかった。アナグリプチンは100μg/mLにおいてCYP1A2、CYP2C8/9、CYP2C19及びCYP3A4に対するわずかな誘導を示したが、10μg/mLではいずれに対しても誘導を示さなかった。また、アナグリプチンはCYP1A、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4に対する阻害を示さなかった。アナグリプチンのSKL-12320への代謝においては、DPP-4、コリンエステラーゼ、カルボキシルエステラーゼが関与することが示唆された(in vitro)。
健康成人男性(6例)に本剤100mgを単回経口投与したとき、投与72時間後までのアナグリプチンの尿中排泄率は49.9%であり、投与24時間後までの腎クリアランスは315mL/h/kgであった。
健康成人男性(6例)に本剤200mgを1日2回、7日間反復経口投与したとき、投与216時間後までのアナグリプチンの累積尿中排泄率は54.2%であった。
健康成人男性(6例)に[14C]アナグリプチン100mgを単回経口投与したとき、総放射能の73.2%が尿中に、25.0%が糞中に排泄された。尿及び糞中に排泄されたアナグリプチンの割合はそれぞれ投与量の46.6%及び4.1%であった(外国人データ)。
アナグリプチンはヒトP糖たん白及び有機アニオントランスポーター(hOAT1、hOAT3)等の基質であることが示された。また、有機アニオントランスポーター(hOAT3)及び有機カチオントランスポーター(hOCT2)に対する弱い阻害作用が認められた(IC50値:25.2及び33.8μg/mL)(in vitro)。
・アログリプチン(ネシーナ)
アログリプチンはCYP2D6によりN-脱メチル化体の活性代謝物M-Iに、また、N-アセチル化により非活性代謝物M-IIに代謝されるが、M-I及びM-IIのAUCはそれぞれ血漿中アログリプチンの1%未満及び6%未満であり、いずれも微量代謝物であった。
また、アログリプチンはCYP3A4/5に対して弱い阻害作用と弱い誘導作用を示したが、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6を阻害せず、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19を誘導しなかった(in vitro)
健康成人(8例)にアログリプチンとして25mgを1日1回7日間反復経口投与した時、投与216時間後までのアログリプチンの累積尿中排泄率は72.8%であった。また、健康成人(8例)にアログリプチンとして25mgを単回経口投与した時の腎クリアランスは10.7L/h(178mL/min)であり、アログリプチンの尿中排泄には、能動的な尿細管分泌の関与が示唆される
・リナグリプチン(トラゼンタ)
- ヒト肝ミクロソーム及びヒト肝細胞による14C-リナグリプチンの代謝は極めて弱いが、主たる代謝物の生成にはCYP3A4が関与しており、他のCYP酵素の関与はなかった。リナグリプチンはヒト肝ミクロソームのCYP3A4活性を競合的に阻害するがその程度は弱く(Ki=115μM)、CYP1A1、1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1、4A11を阻害しなかった。また、ヒト肝ミクロソームのCYP3A4を弱~中程度に不可逆的に阻害した。酵素誘導試験においてCYP1A2、2B6、3A4の誘導はみられなかった。(in vitro)
- 健康成人に14C-リナグリプチン10mgを経口投与したとき(6例)、血漿中には主に未変化体が認められ(血漿中放射能に対する割合は約62%)、主な代謝物はCYP3A4によって生成するピペリジニル基の水酸化体であった(血漿中放射能に対する割合は約5%)(外国人データ)。
TZ
・ピオグリタゾン(アクトス)
ピオグリタゾンの代謝にはチトクロームP450 1A1、1A2、2C8、2C9、2C19、2D6、3A4の複数の分子種が関与している。リファンピシンと併用するとピオグリタゾンのAUCが54%低下するとの報告がある。
健康成人男子(14例)に空腹時にピオグリタゾンとして1回30mgを単回経口投与した時、尿中には主としてM-Ⅳ~Ⅵが排泄され、投与後48時間までの累積尿中排泄率は約30%である