情報確認日:2026年11月7日
抗生物質で下痢になったらどうする? 整腸剤・下痢止めの違いと受診目安を薬剤師が解説
「抗生物質を飲み始めたら、お腹がゆるくなった」 「下痢が出たら抗生物質をやめてもいい?」 「整腸剤や市販の下痢止めを一緒に飲んでも大丈夫?」
抗生物質(抗菌薬)の服用中には、 下痢や軟便などの消化器症状が現れることがあります。
多くは比較的軽い症状ですが、 中には重篤な大腸炎が隠れている場合もあります。
この記事では、PMDAの医薬品安全性情報を参考に、 抗菌薬による下痢の原因、 整腸剤と下痢止めの違い、 受診すべき症状を薬剤師が解説します。
結論|軽い軟便と、強い下痢・血便では対応が異なる
抗生物質による軽い軟便は、必ずしも 重篤な副作用を意味するわけではありません。
ただし、下痢の程度や原因によって対応が異なるため、 処方医や薬剤師に相談することが大切です。
強い腹痛、頻回の水様便、血便、発熱、 脱水症状などがある場合は、 重篤な大腸炎の可能性があるため、 速やかに医療機関を受診してください。
特に重篤な副作用が疑われる場合は、 次の服用を続けるかどうかについても 直ちに医療者の判断を受ける必要があります。
市販の下痢止めで症状を抑えて 様子を見ることは避けましょう。
医薬品安全性情報|抗菌薬による重篤な大腸炎に注意
PMDAは、医薬品による重大な副作用の早期発見と 適切な対応を支援するため、 「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を公開しています。
このマニュアルには、患者・一般の方向けと 医療関係者向けの資料があります。
また、抗菌薬の使用上の注意改訂情報では、 偽膜性大腸炎や出血性大腸炎などの 重篤な大腸炎について、 腹痛、頻回の下痢、血便などの症状が 注意喚起されています。
これらは以前から知られている安全性情報であり、 2026年に新しく発見された副作用ではありません。
抗菌薬の服用中に下痢が起きた場合は、 単なる胃腸症状として見過ごさず、 症状の程度を確認することが重要です。
なぜ抗生物質を飲むと下痢になるの?
抗菌薬は、感染症の原因となる細菌に作用する薬です。
しかし、薬の種類によっては、 腸内に存在する細菌にも影響を与えます。
その結果、腸内細菌叢のバランスが変化し、 下痢や軟便が起こることがあります。
こうした状態は、一般に 「抗菌薬関連下痢症」と呼ばれます。
抗菌薬関連下痢症はすべて同じ原因?
いいえ。
抗菌薬による下痢には、 腸内細菌叢の変化などによるもののほか、 特定の細菌が増殖して起こる 感染性の大腸炎などもあります。
特に注意が必要なのが、 クロストリジオイデス・ディフィシル (Clostridioides difficile)による感染症です。
偽膜性大腸炎・C. difficile感染症とは?
C. difficileは、 抗菌薬の使用などをきっかけに 腸内で増殖し、毒素を産生することがあります。
その結果、下痢や大腸炎を引き起こす場合があります。
重症化すると、強い腹痛や全身状態の悪化などを 伴うことがあります。
なお、C. difficile感染症と 偽膜性大腸炎は完全に同義ではありません。
C. difficile感染症でも 偽膜が確認されない場合があります。
どんな症状に注意する?
- 水のような下痢が何度も続く
- 強い腹痛や腹部の張り
- 発熱
- 血便
- 水分が取れない、尿が少ない
- ぐったりしている、意識状態が悪い
これらの症状がある場合は、 早急な医療機関での評価が必要です。
抗菌薬の服用中だけでなく、 服用を終えたあとに症状が現れることもあります。
抗生物質で下痢が出たら、途中でやめてもいい?
対応は、下痢の程度や感染症の状態によって異なります。
軽い軟便の場合
軽い軟便だけであれば、 必ずしも抗菌薬の中止が必要とは限りません。
ただし、下痢が続く場合や症状が悪化する場合は、 処方医や薬剤師に相談してください。
強い下痢や血便がある場合
重篤な大腸炎が疑われる場合には、 原因となる抗菌薬の中止や変更、 検査・治療が必要になることがあります。
強い腹痛、頻回の下痢、血便などがある場合は、 次の服用を続けるかどうかも含めて、 直ちに処方医または救急医療機関へ相談してください。
重大な副作用が疑われるときに、 「処方された薬だから必ず最後まで飲まなければならない」 と考えて受診を遅らせないことが大切です。
整腸剤と下痢止めは何が違う?
| 比較項目 | 整腸剤 | 下痢止め |
|---|---|---|
| 主な目的 | 腸内環境や便通を整える | 下痢症状を抑える |
| 作用 | 菌種や製品により異なる | 腸の運動などへの作用は成分により異なる |
| 抗菌薬との併用 | 製剤や菌種によって判断 | 原因によっては使用を避ける必要がある |
| 注意点 | すべての整腸剤が同じ働きではない | 重篤な感染性大腸炎が疑われる場合は自己使用しない |
整腸剤と下痢止めは、目的も作用も異なる薬です。
特に、抗菌薬を飲んでいるときに 強い下痢が起こった場合は、 下痢止めを追加する前に 原因を確認することが重要です。
抗生物質と整腸剤は一緒に飲んでもいい?
抗菌薬と整腸剤が一緒に処方されることはあります。
ただし、整腸剤にはさまざまな種類があり、 含まれる菌や製剤の特性が異なります。
抗菌薬の影響を受けやすい菌を含む製剤もあれば、 抗菌薬との併用を考慮した製剤もあります。
そのため、 「整腸剤なら何でも一緒に飲める」 「必ず何時間か空ければ問題ない」 とはいえません。
処方された整腸剤については、 薬袋や薬剤師の説明に従って服用してください。
市販の整腸剤を追加してもいい?
すでに処方薬を使用している場合は、 市販の整腸剤を追加する前に 薬剤師へ相談することをおすすめします。
整腸剤を追加しても、 重篤な大腸炎を治療できるわけではありません。
免疫機能が低下している方や 重い基礎疾患がある方では、 生菌製剤の使用についても個別の判断が必要です。
抗生物質による下痢に、市販の下痢止めは使える?
抗菌薬の服用中に下痢が起きた場合、 自己判断で下痢止めを使用することは避けてください。
下痢の原因によっては、 腸の運動を抑える薬が適切でない場合があります。
特に、C. difficile感染症などの 重篤な感染性大腸炎が疑われる場合は、 医療機関での評価が必要です。
血便、発熱、強い腹痛、頻回の水様便があるときは、 市販薬で症状を抑えようとせず、 速やかに受診してください。
下痢が出ているときの水分補給は?
下痢が続くと、水分だけでなく ナトリウムなどの電解質も失われることがあります。
意識がはっきりしていて、 飲み込むことができる場合は、 少量ずつ水分を補給しましょう。
脱水状態にある場合には、 経口補水液が役立つことがあります。
ただし、経口補水液は すべての方の日常的な水分補給に 必要なものではありません。
水分を飲めない、尿が著しく少ない、 ぐったりしている場合などは、 医療機関での対応が必要です。
よくある質問
Q1. 抗生物質を飲むと必ず下痢になりますか?
いいえ。下痢の発生は抗菌薬の種類や患者さんの状態によって異なります。 すべての方に起こるわけではありません。
Q2. 下痢が出たら抗生物質が効いている証拠ですか?
いいえ。下痢は抗菌薬の効果を示す指標ではありません。 副作用や別の病気の可能性があります。
Q3. 整腸剤を飲めば下痢は必ず治りますか?
いいえ。整腸剤の効果は製剤や病状によって異なります。 重篤な大腸炎では別の治療が必要です。
Q4. 抗生物質と整腸剤は時間を空けるべきですか?
一律の決まりはありません。 抗菌薬と整腸剤の種類によって異なるため、 個別の服薬指示を確認してください。
Q5. 抗生物質を飲み終わったあとに下痢が出ることはありますか?
あります。抗菌薬関連下痢症やC. difficile感染症は、 服用終了後に症状が現れる場合もあります。
Q6. 子どもの抗生物質による下痢も同じ対応でいいですか?
子どもでは脱水が進行しやすいため、 年齢、食事・水分摂取量、尿量、元気の有無を 含めた判断が必要です。
乳幼児で下痢が続く、ぐったりしている、 水分が取れない場合は早めに受診してください。
薬剤師として確認したい5つのポイント
① 抗菌薬の名前と服用開始日
どの抗菌薬を、いつから、 どのくらいの量で使用しているかを確認します。
② 下痢の回数と性状
軟便なのか、水様便なのか、 血便があるか、腹痛や発熱を伴うかを確認します。
③ 脱水の有無
水分摂取量、尿量、口渇、 全身状態などを確認します。
④ 整腸剤・下痢止めの使用状況
処方薬だけでなく、 市販薬やサプリメントの使用も確認します。
⑤ 重篤な大腸炎を疑う症状
頻回の水様便、強い腹痛、血便、 発熱、脱水などがあれば、 速やかな医療機関での評価につなげます。
まとめ|抗生物質による下痢は症状の程度で対応を判断
- 抗菌薬によって下痢や軟便が起こることがある
- 腸内細菌叢の変化などが原因となる場合がある
- 重篤な大腸炎が隠れている場合もある
- 強い腹痛、頻回の下痢、血便などは受診が必要
- 整腸剤と下痢止めは役割が異なる
- 市販の下痢止めを自己判断で追加しない
- 抗菌薬の継続・中止は症状に応じて医療者と判断する
抗生物質の服用中に下痢が起きた場合は、 「どのくらいの下痢か」「ほかの症状があるか」 を確認することが大切です。
軽い症状でも不安があれば薬剤師へ相談し、 強い症状がある場合は受診を優先してください。
参考資料・一次情報
- PMDA 「重篤副作用疾患別対応マニュアル(患者・一般の方向け)」
PMDA公式ページ - PMDA 「重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け)」
PMDA公式ページ - PMDA 「使用上の注意改訂情報(平成23年8月9日指示分)」 アジスロマイシン製剤の重篤な大腸炎に関する注意喚起
使用上の注意改訂情報 - PMDA 「使用上の注意改訂情報(平成26年8月6日指示分)」 抗菌薬関連製剤の出血性大腸炎に関する注意喚起
使用上の注意改訂情報 - PMDA 「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
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情報確認日:2026年11月7日
本記事はPMDAが公開する医薬品安全性情報を 参考に作成した一般的な医療情報です。 特定の抗菌薬、整腸剤、下痢止めの使用を 一律に推奨するものではありません。 実際の服薬判断は最新の電子添文と 医師・薬剤師の指示に従ってください。




